No.72 退職後の傷病手当金・出産手当金 [2012.10.26]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
おいでいただきありがとうございます。

本日は、健康保険制度の「傷病手当金」「出産手当金」について、
受給の途中で退職した場合、
それ以降の給付はどうなるのか、お伝えいたします。

特に、出産手当金は、時世に合わせて変わっていますので、
何年も前に、制度をちょっと聞いた・・・
という方はご注意くださいね。

【資格喪失後の傷病手当金】

被保険者資格があるとき(在職時)にもらっていた傷病手当金は、
その傷病で働けない状態である限り、退職後も受けられます。

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[注意点]

1.資格を喪失する日の前日までに
継続して 1年以上被保険者であった人に限る

2.在職時に実際に傷病手当金を受給していること※

※傷病手当金にかかる「待期期間」を満了していない場合や、
待期期間は満了しているが傷病手当金を受給していない場合などは、
この「受給している」にあたりません。

例:私傷病により9月1日から休み始め、9月3日に退職した場合
待期期間の3日目で退職しており、実際の給付を受けないために、
資格喪失後の傷病手当金はもらえません。

3.資格喪失後の傷病手当金の支給は、
「当初在職時にもらい始めた日から数えて」1年半まで
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傷病手当金を退職後も受給するつもりならば、
少なくとも、在職中に実際に傷病手当金を受給する必要がある
ことに注意してください。

【資格喪失後の出産手当金】

資格を喪失する日の前日までに
継続して1年以上被保険者であった人は、
資格を喪失した際に現に受けていた出産手当金を
引き続き受けることができます。

こちらも「現に受給していること」が条件となります。
【その他の資格喪失後給付】

資格を喪失する日の前日までに
継続して1年以上被保険者であった人が
資格喪失の日後、6か月以内に出産をしたときは、
被保険者として受けられる出産育児一時金が支給されます。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.71 育児休業中の保険料免除について [2012.10.24]

こんにちは。下中です。
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出産・育児の給付金についてお話しましたが、
育児休業中の社会保険料の免除についてお話します。
育児休業は負担がかかる・・・とお考えの社長様も多いと思います、
社会保険料の免除の制度はご存知ない場合がありますので、
ここはぜひ知っておいてください。
【育児休業中の社会保険料】
育児休業を取ったときは、
無給であったり休業前の収入よりダウンしたりするのが一般的です。
その上、健康保険や厚生年金の支払いが必要になると、
経済的な負担が大きくなります。

このような場合、
申請をすれば、
育児休業中の健康保険や厚生年金の支払いを全額免除されます。
<ポイント>
保険料の免除は従業員だけではなく、負担分も免除されます。
この手続きをすれば、
保険料免除中でも保険料を払っているものとみなされますので、
保険証を使って診察を受けることができ、
将来受け取る年金の給付額が減額されることもありません。
会社としても社会保険料負担なく社会保険資格を継続できますので、
必ず提出してください。

なお、この申請は従業員が行うのではなく、会社が行います。
年金事務所にて育児休業中保険料免除のための申請書を入手して
手続きをしてください。
【保険料が免除される期間】
育児休業の開始日(出産の翌日から数えて57日目)の属する月から、
育児休業の終了日の翌日が属する月の前日までです。
育児休業が長期間に渡った場合、
最長で、
育児休業の対象となる子の満3歳の誕生日が属する月の前月まで
が免除の対象となります。

【育児休業期間を延長するときは】
育児休業期間を延長する場合は、延長の届出を行うことができます。

【その他の注意事項】
育児休業は、男性にも取得が認められていますので、
男性加入者も対象となります。
この届出をしない場合、
社会保険料は免除されませんので、
届出忘れのないように注意が必要です。

【必要書類】
母子手帳(写)
社会保険の制度は、育児についてのサポートが手厚くなっています。
保険料免除については、ぜひ漏らさずご活用ください。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

ひばり通信(ニュースレター)12年10月号を作成いたしました。

ひばり通信10月号表紙(PDF)

ひばり通信(ニュースレター)12年10月号を作成いたしました。

記事の閲覧をご希望の方は、
恐縮ですが、「お問い合わせ」よりご連絡ください。
メールにてお送りいたします。
(次回より、毎月新号をメールにてお送りします。)
バックナンバーご希望の場合は、その旨をご記載ください。
お役に立ちましたら幸いです。

 

2012年10月号【目次】

01: 派遣・継続雇用法律改正について
02: 最低賃金改正のお知らせ
03: 企業秘密情報の保持と競業避止の関係
04: (話題のビジネス書)選択の科学
06: 企業秘密情報保持チェックシート

No.70 健康保険の傷病手当金について [2012.10.11]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
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健康保険の傷病手当金は、
サラリーマンにとってのメリットとして、
筆頭ともいえる制度です。
これから社会保険の加入を考えている社長様、
従業員から天引きについて不満を言われている社長様・・・
ぜひご参考としていただければ幸いです。

労災でない私生活上の病気や怪我により会社を休んだ場合、
健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
【傷病手当金の条件】

傷病手当金は、
被保険者(健康保険の加入者)が、
以下すべての条件に当てはまった際に支給されます。

① 病気やけがのために働くことができない
② 会社を休んだ日が、連続して3日間ある(いわゆる待機期間)
③ 4日目以降も休み
ただし、休んだ期間について
事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、
傷病手当金は支給されません。
【いくら支給されるか】

支給額は、病気やけがで休んだ期間、1日につき、

「標準報酬日額の2/3に相当する額」

です。

なお、働くことができない期間について、
下記、ア、イ、ウに該当する場合は、
傷病手当金の支給額が調整されることとなります。

ア.事業主から報酬の支給を受けた場合

イ.同一の傷病により障害厚生年金を受けている場合
(同一の傷病による国民年金の障害基礎年金を受けるときは、その合算額)

ウ.退職後、
老齢厚生年金・老齢基礎年金・退職共済年金などを受けている場合
(複数の老齢給付を受けるときは、その合算額)
ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より多いときは、
傷病手当金の支給はありません
ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より少ないときは、
その差額を支給することとなります。
【支給の例】

標準報酬月額20万円、
9月1日~9月3日有休消化、
9月4日~9月30日無給で休んだ場合

20万円÷30×2/3×27日分=119,880円

上の例で、待機期間の3日は有給・無給を問いませんので、
有休消化した場合も「待機」として扱われます。
ただし、連続して3日の待機期間が必要ですので、
飛び飛びに休んだ場合は「待機」として扱われません。
【その他注意事項】

1.医師の証明について

傷病手当金の支給申請には、以下2点が必要です。
① 医師が労務不能と証明すること
② 会社が給与支払なしと証明すること

①をもらうには、証明書発行の手数料がかかります。
傷病による休業期間があまりに短い場合
(例えば給付対象が1日しかない場合など)、
その証明書発行手数料を差し引くと
実質的支給額が少なくなることがあります。
2.申請のタイミングについて

また、傷病手当金は、前述②のように
「会社が給与を支払っていない証明」が必要なため、
給与締日の途中までの医師証明を取っても、
その月分の給与締日が来て、
給与支払額が確定しなければ申請できません。
できれば、会社の給与締日に合わせて
医師の証明を取ることをお勧めします。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.69 問題社員の解雇について② [2012.10.09]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
おいでいただきありがとうございます。

前回に続き、解雇についてお伝えします。
問題社員の解雇、
特に能力不足の社員を解雇する場合には、

「問題点の改善のための教育・研修をしているかどうか」

が重要になります。

また、
「問題社員の「問題」を客観的に証明できるか」
も重要です。

以下、問題社員の解雇事案の際に
裁判所が重視する点について説明します。
<問題の程度>
【1.勤務態度不良の程度】

お客様からのクレーム事実が、
「日付」「状況」「クレーム内容」など
詳細に記録されているでしょうか。
たとえばクレームがあった場合には、
「クレーム報告書」などの所内書式に基づいて
本人から報告をさせることでそのクレーム事実を証明しやすくなります。
【2.問題発生の回数】

何回も同様の種類のトラブルを繰り返していることは
解雇しやすい方向の要素になります。
「何回も指導したのだけど改まらなかった」
という状態であることです。
【3.問題点、問題行動について会社の指導があったのか】

解雇する前に十分な注意、指導、教育を行っているかが大事です。
長期間複数回にわたってきっちりとした注意指導をするほど
解雇しやすい方向になります。

※指導の事実は「指導書」などの書面化するほか、
口頭や電話、メールなどでの指導も
「〇月〇日に〇〇という事案について
△△という方法でこのように指導し、
改善の意思を確認した」
などの記録しておくべきでしょう。
【4.改善指導について、本人の態度はどうだったか】
改善指導、いわゆるイエローカードに対して
本人がどのようにリアクションしたかも重要です。
【5.他の社員との公平性はあるか】
同じような問題行動・ミスをした他の社員は
どんな処分を受けていたかも重要です。
そこに不公平がある場合は解雇しにくくなります。
以上のことから、
「教育指導をしつつ、その指導事実を記録しておくこと」
が、解雇の有効性を考える上で重要になるでしょう。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.68 問題社員の解雇について① [2012.10.05]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
おいでいただきありがとうございます。

本日は、解雇についてお伝えします。
社長様からは特に質問の多いトピックですので
ぜひご参考にしてください。
問題社員の解雇については、
ご存知のようにかなり高いハードルがあると言えます。

日本では、終身雇用制度を前提とした労働理論が発展しており、
社員を一人前に育てて、その能力を高めるのは
採用した会社の責任であるという考え方がベースになっています。

つまり、問題社員(特にその能力不足による)の解雇については、
「会社側がその問題点を注意・指導する段階があるかないか」
が重要になってきます。

以下、問題社員の解雇事案について裁判所で重視される要素を示します。
【1.解雇する前に、配置転換や職種の変更などで様子をみたか?】
他の上司のもとで異なる職務をさせると、
能力を発揮しだすこともある。
そのチャンスを与えているのかを見られます。
環境か仕事内容を変えてみたか、ということです。

【2.会社側に落ち度はないか?】
問題社員の問題について、
会社の制度や体制に落ち度がないかを見られます。
会社にも原因がある場合、
一方的な解雇は不公平とされる可能性があります。
例)教育や研修が不十分である、
上司の指示が不明確・不適切である

【3.即戦力として中途採用された者か、新卒か?】
新卒であれば、とくに会社の教育責任の度合いは強いでしょう。
単に期待された能力がないことだけで解雇をすることは
難しくなります。
一方、即戦力として中途採用された者について、
その採用面接で「即戦力として求めている能力」をはっきりとさせ、
かつ、それが一定の常識的な条件下で出来ないときには
解雇等もあり得ると伝えている場合は、
解雇の有効性が高くなるでしょう。

【4.勤続年数はどのくらいか?】
勤続年数が長ければ、
基本的な能力には問題がないはずだという推定が働きます。
つまり、
「基本的な能力が足りないならば
もっと早い段階で処分や再教育があったはず」
という考えが出てきます。
これらを考えると、
経営者は雇入れの段階から
「教育コストはかかるもの」という認識でいたほうがよいでしょう。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.67 改正労働者派遣法10月1日施行 [2012.10.03]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
おいでいただきありがとうございます。

本日は、10月1日より施行された、
改正労働者派遣法についてお伝えします。
派遣労働者を受け入れている会社様にも、
注意点していただく必要がありますので、ぜひ確認をお願いします。
10月1日より労働者派遣法改正法
(正式名称は
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)
が施行されました。

これまでよりも
派遣労働者保護や派遣元事業主への規制が強化されたものとなり、
派遣労働者を受け入れている企業にとっても
大きな影響が生まれることが予測されます。
主な改正内容は、次のとおりです。
①日雇派遣の原則禁止

②グループ企業内派遣の8割規制

③実績報告の義務化

④離職後1年以内の労働者を
再び派遣労働者として受け入れを禁止

⑤派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の
派遣料金に占めるマージン率などの情報公開を義務化

⑥派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、
無期雇用への転換推進措置を努力義務化

⑦派遣労働者の賃金等の決定にあたり、
同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮

⑧雇入れ等の際に、
派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示

⑩労働者派遣契約解除時の、
派遣元及び派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、
休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化

⑪違法派遣(*)の場合、
派遣先が違法であることを知りながら
派遣労働者を受け入れている場合には、
派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものと「みなす」

特に⑪の「みなし」制度は、
気づいたら直接の労働契約が成立する可能性がある制度です。
違法派遣となる禁止業務などについての知識など
きちんとした対応が求められます。

労働者派遣法は、
思ったより厳しい規定であると思った方がいいですね。

また個々の項目について詳細ご説明させていただきます。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。