No.39 業務上事故の使用者責任について [2012.06.18]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
関越自動車道で4月29日に7人が死亡した高速ツアーバスの事故は、
その凄惨さから世間の大きな注目を集めています。

数年前にも、同様の事故が発生し、犠牲者が出ました。
その時から何ら変わっていなかったことが悔やまれてなりません。

価格競争に端を発する業界の下請け・孫請け構造、
労務管理体制の不備や違法性が次々に明らかになると同時に、
今後企業は、
世間からますます高い企業倫理を求められることになるでしょう。

本日は、業務上の事故の使用者責任について取り上げます。
【業務上事故の使用者責任】
そもそも、この「使用者責任」という耳慣れない言葉は、
民法上に規定されているものです。

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<民法715条1項>
ある事業のために他人を使用する者は、
被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
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つまり、仕事をしていて第三者に損害を与えた場合には、
会社には損害賠償責任があるということになります。
ただし、次の例外があります。

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使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、
又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
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これは、会社が相当の注意をしていたのに起きてしまった事故の場合は、
その範囲において会社は賠償責任を負わなくともよい、ということです。

言い方を変えれば
『「会社が相当の注意をしていた」と立証できない限りは、会社の責任はある』
ということになります。

【使用者責任の例】

●残業や休日出勤により疲労の蓄積が認められる状態で交通事故を起こした場合、
その点で企業は責任がある。

●発作を伴う病気を持った労働者であると知りながら
業務上車の運転をさせ事故を起こした場合、使用者責任がある。

●労働者が(勝手に)
不正な会計処理や公文書偽造により第三者に損害を与えた場合、
(会社が不正を命令していないとしても)
監督責任を果たしていないとなる可能性がある。
【事故を起こした労働者の責任はあるか】
もちろん事故を起こした本人にも責任があるため、
会社がその損害賠償金を支払った場合は
本人に請求(「求償」といいます)できます。

しかし、この求償の場合にも、
労働条件や事故防止策について会社の不備がある場合には制限がかかります。
会社はこのように大きな社会的責任を担っている分、
残業等の労働時間管理や内部統制には十分な対策を練る必要があります。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。