No.44 「遅刻3回で1日欠勤の扱い」は可能なのか?【実例】 [2012.06.25]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)
Eさんは、入社して浅いですが、とても真面目な社員です。
仕事も早くて正確と評判です。
休むこともめったにありません。
そんなEさんですが、ここ最近、少し疲れているようです。
どうも家庭で問題が起こっているようです。
睡眠不足が続いているようで、
ある日、遅刻してしまいました。
そして何日かして遅刻、そしてまた何日か後に遅刻。

いつも真面目なEさんですし、上司のS氏も心配して声をかけますが、
大丈夫と言うので、それ以上はなかなか言えない状態です。
さて、給料日になりました。

Eさんの給料、遅刻について、
・・・3回遅刻ということで、1日欠勤とされ、
その分の給料が引かれていました。
驚いたEさんは、まずは上司のS氏に確認しましたが、
S氏もそれは経験がなく答えられませんでしたので人事に確認したところ、
就業規則、賃金規程に定めがあるとのことでした。

給料が、多少引かれることは覚悟していましたが、
こんなに引かれるとは思っていませんでした。
そもそも遅刻は3回合わせても、1時間にもなりません。
この制度は本当に有効なのでしょうか???

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この制度を導入している会社様は、たまにあるようです。
(かなり前の話ではありますが、正真正銘「実例」です。^^ゞ)

法的なところでは、解釈の分かれるところのようです。
何が問題になるかというと、
前回お話した、
「減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならない」
という部分ですね(労働基準法第91条)。

就業規則等に定めをしてあることが前提ですが、
解釈によっては法的にもクリア、と考えられますが、
違法になるとも考えられますので、
あまりおすすめできません。

というよりも・・・
そもそも、この制度の目的は、
遅刻した社員を戒め、遅刻をしないようにする制度だと思われます。
しかし、賃金に対する考え方はいろいろで、
中には、「罰金さえ払えばいいんだろ」という従業員もいれば、
そもそも、給料を引かれたことに気付かない従業員もいるのです。

ですから、罰金を取る、というような制度自体を、
あまりおすすめできないのです。
(もちろん定めることもできます。)

遅刻した従業員に対しては、懲戒処分として、
反省を促し、始末書を取るなどの処分を検討すべきかと思います。
もちろん、そこは、「就業規則」の「懲戒」と、
遅刻等に対して減給をするならば、
「就業規則」と「賃金規程」等にも定める必要があります。
おそらく、よく遅刻する従業員がいたので、
そのような従業員対策で、この制度を定めたのだと思いますが、
普段は該当しそうもないのにたまたま遅刻した従業員に適用され、
不満の原因になったりします。

制度設計は慎重に考えてくださいね。
なお、家庭の事情などで、勤務時間を変更した方がよい場合には、
柔軟に対応することもひとつの方法だと思います。

時間を短くしたり、平易な業務への転換や役職の変更等を伴う場合には、
給料を変更することも可能です。
★ただし、遅刻癖のある人間は、
9時には間に合わないから10時に変更すればちゃんと来る、かというと・・・
やっぱり遅刻することが多いので、
そこは別の対策をする必要があるでしょう。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。