No.76 「定額残業代」について [2012.12.08]

こんにちは。下中です。
本日も「ひばり人事労務コラム」
おいでいただきありがとうございます。
本日は、残業代対策でよく使われる、
「定額残業代」についてお伝えします。
『定額残業代』とは、
基本給とは別に毎月一定の金額を残業代として支払うものです。
この制度をうまく利用できていれば、
長く働くことで給料が増えるという労使双方の弊害を防ぎ、
従業員が、労働時間を短くすることに神経を向けますので、
効率的に働くことが期待できます。

しかし、定額残業代を設定するときには注意が必要です。
「定額残業代を支払っていれば労働時間を計算する必要はない」
「定額残業代を支払っていればそれ以上に残業代を支払うことはない」
等の考え方は、間違っていることになります。
賃金(基本給や手当)に含まれる残業代を明確にし、
それが何時間分の割増賃金にあたるのかを
明示しなければなりませんし、
実際の残業が、賃金に含まれる時間を超える場合は、
その差額を支払うことも必要です。
入社した時、またそもそも創業した時の賃金設定の時、
この制度を最初から使用していれば、
さほど大きな問題は起こりません。
(もちろん、明示すること、差額が出た場合は支払うこと、
そして労働・残業時間を管理すること等が必要です。)
しかし、今まで残業代が多かったために、
それを抑制しようとして「定額残業代」を導入し、
問題が起こった例は多くあります。

定額残業代の金額が低めに設定され、
「残業代をきちんと計算してみたら不足していた」
という事がよく起こっています。
従業員にとっては、不利益変更となる場合が多いので、
きちんと説明をして、同意を得ることが必要です。

また、「残業代」の抑制という観点だけではなく、
従業員の健康のためにも、
「残業時間」そのものの削減に努める必要があります。
そのような手立ても合わせて実施するようにしましょう。
こちらもおいおいお伝えいたします。
なお、定額残業代の金額が低すぎ、
労働時間を管理していなかったために不払いが生じる、
といった問題が起こることも多いですが、
定額残業代の金額を大きくし過ぎることも問題となります。
また、関連して、定額残業代を設定するときには、
基本給が最低賃金を上回っているかもチェックが必要です。

もうひとつ、
年俸制には残業手当はいらないと思っている方も多いようですが、
そのようなことはありません。
月給を固定額とするなら、上記と同様に、
残業代の金額と何時間分含まれているかを明記することが必要です。
便利な制度だと安易に考えていると、
痛い目に合うことも多い制度です。
しかし、うまく運用できればメリット多くあります。
導入をお考えの場合はぜひ専門家にご相談され、
正しく、前向きに運用なさってください。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。