No.37 ハローワーク職員、情報漏えいで逮捕(その教訓)【ニュース】 [2012.06.16]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
本日は、ニュースからの考察です。
今月初め、ハローワークの職員が、
雇用保険の情報を漏えいしたということで、
国家公務員法違反の疑いで警察に逮捕されました。

また、受け取った側の情報会社の社員も逮捕されました。

そして、それを受け、厚生労働省の対策が発表されました。
このニュースから、何を考えればよいでしょうか。
どの部門に限らず、
「就業規則」等に、情報の取り扱いについて定め、
退職後であっても漏えいしてはならない旨を記載します。
入社時および退職時には、
個別に「秘密保持誓約書」等を取得しましょう。

今は「情報」の時代で、
どんな部門で働こうと、「守秘義務」はありますが、
人事部門の従業員は、特に、
「守秘義務」ということに気を使います。

今回の事件のように、外部に漏えいするということは、
めったにあることではありませんが、
人事部門が気にするのは、
内部(同僚)へも秘密を守る必要があるということです。
で、飲み会に行っても、
他の従業員は、情報を得ようとカマをかけてきたりします。

人事担当者は孤独になりがちなので、
ストレスからのメンタルヘルス不調にも、
気を配る必要があります。
直接の関係はないかもしれませんが、
「他山の石」としましょう。
ニュースを抜粋しておきます。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

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「職歴情報漏えい:1000件超か 数年にわたり、やり取り」

毎日新聞 2012年6月3日

横浜市中区の横浜公共職業安定所(ハローワーク横浜)の
職歴情報漏えい事件で、
国家公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで
愛知県警に逮捕された非常勤職員のN容疑者(47)が、
これまでに1000件以上の情報を部外者に不正に漏らしていた疑い
のあることが県警への取材でわかった。
西沢容疑者は全国の雇用保険の被保険者のデータに自由にアクセスでき、
九州や南関東など全国の被保険者の情報が外部に流出したとみられる。
捜査関係者によるとN容疑者は11年1月以降、
全国の被保険者約4万8000人の情報にアクセスした記録が残っており、
ほかの職員よりアクセス数が多く
漏えいは少なくとも1000件以上あるとみて捜査している。
調べでは、同法違反容疑で逮捕された調査会社役員、F容疑者(51)は、
複数の調査会社の依頼を受け、
N容疑者に情報提供を依頼し職歴情報を不正取得。
2人は数年にわたって情報をやり取りしていた可能性があるという。
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「ハローワーク情報漏えい 対策強化」

NHK WEB 2012年6月13日

横浜市のハローワークの相談員が
雇用保険に加入している人の個人情報を外部に漏らしたとして
逮捕された事件を受けて、
厚生労働省はハローワークの職員が閲覧した個人情報の内容を
毎日、上司に報告させるなど情報の
漏えいを防ぐための対策を強化することになりました。
横浜市にある「ハローワーク横浜」の47歳の相談員の女は、
雇用保険に加入している人の職歴などの個人情報
を調査会社に漏らしたとして、
今月1日国家公務員法違反の疑いで警察に逮捕されました。

この事件を受けて、
個人情報の漏えいを防ぐための対策を検討していた厚生労働省は
新たな対策をまとめ、12日、全国の労働局に通知しました。
それによりますと、個人情報にアクセスする権限を、
窓口で対応する支援員など特定の業務に当たる職員に制限するほか、
職員が個人情報を閲覧した場合、
その内容や件数を毎日、上司に報告するとしています。
さらに、個人情報を閲覧した理由について調べる
「抜き打ち検査」も定期的に実施するとしています。
厚生労働省は「個人情報の適正な取り扱いを徹底し、
綱紀粛正を図りたい」と話しています。
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※このページでは、容疑者の実名を控えさせていただきました。

No.36 社会保険の加入要件について [2012.06.15]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
No.7において、新規で加入する社会保険についてお伝えしました。
No.7 社会保険の加入②社会保険

本日は、それを踏まえて、確認にてご説明をしたいと思います。

以下の民間企業は、
社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要があります。
・個人事業(従業員5人以上、製造業・卸売業などのうち16業種)
・法人企業(従業員の数は問わない)
また、社会保険には「被保険者」となる基準が定められています。
その基準とは、どのようなものでしょうか。
まず、正社員は社会保険被保険者となります。
正社員以外は、主に以下2つ条件でしたら加入しなくてよいとされています。
【1.正社員と比べて「働く時間」か「労働日数」が3/4未満の者】
(a)正社員の週所定労働時間が40時間の場合
【40日 × 3/4 = 30時間】未満
(b)正社員の月の所定労働日数が22日の場合
【22日 × 3/4 = 16.5日】未満
パートタイマーの労働条件について、
上記の「時間」または「日数」をひとつの基準として
社会保険加入の有無を判断してください。

なお、社会保険加入に関する行政調査の際には、
「契約上」よりもむしろ「実態」を元に適用を判断されます¬¬¬¬¬。
つまり、たとえ契約上は社会保険適用除外であっても、
実態として基準を超えていれば「社会保険適用すべし」となります。
この点で、社会保険加入基準ギリギリのパートタイマーについては、
時間などの管理を厳格に行うことが必要でしょう。

補足として、前述の労働時間(週30時間未満)を基準とする場合、
その30時間を月に換算すると概ね「130時間」となります。
月次の労働時間を見て130時間を超えている場合、
社会保険の加入義務があると判断されますので、参考にしてください。
また、前述の(a)(b)は
「どちらかひとつを満した」場合は適用除外となりますので、
社会保険に加入をしないためには
「労働時間を抑える」か「労働日数を抑える」かのいずれかの方策を取ればよい、
ということになります。
【2.日雇いや2月以内の期間雇用者】
いわゆる期間雇用者などについては、
上記のように適用除外要件が定められています。
その他にも要件はありますが、
以上の2つを代表的なものとして覚えておくと便利です。

以上、社会保険の加入要件についてでした。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.35 賃金支払の5原則 [2012.06.14]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
労働基準監督署から、事業所が指摘される事項として、
「賃金の未払い」の問題が増えています。
本日は、基礎となる、賃金支払いの原則についてお伝えします。
労働基準法第24条は、賃金の支払について定められています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなりません。
また、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

①通貨払の原則
②直接払の原則
③全額払の原則
④毎月1回以上払の原則
⑤一定期日払の原則

ひとつずつ見ていきましょう。
①通貨払の原則
賃金は通貨(現金)によって支払わなければなりません。
ただし、労働者の同意を得て銀行口座に振り込む事は認められています。
外国通貨や小切手による支払は違法になります。
②直接払の原則
賃金は、直接労働者に支払わなければなりません。
未成年者にも直接支払わなければなりません。
※代理人に支払うことはできませんが、
使者に支払うことは認められています。
③全額払の原則
賃金はその全額を支払わなければなりません。
次の例外があります。
・法令に別段の定めがある場合
給与所得税の源泉徴収、社会保険料の控除等は認められます。
・従業員との労使協定により賃金から控除することとしたもの
購買代金、社宅等の賃貸料、労働組合費等
④毎月1回以上払の原則
賃金の支払いは毎月1回以上支払う必要があります。
毎月一回以上ですので日払いや週払いも問題ありません。
⑤一定期日払の原則
賃金は、毎月一定の期日に支払わなければなりません。
25日から月末、毎月第2月曜日などは支払日を特定できませんので、
一定期日とはいえません。
支払日が休日にあたる場合、
支払を繰り上げて支払うこと、又は繰り下げて支払うことは、
いずれも一定期日払いに違反しません。
※月末支払となっている場合、繰り下げてしまうと、
毎月1回以上払いの原則に違反すると考えられます。

よくある勘違いで、知らずに法に違反していることもあります。
例えば・・・
・遅刻を15分単位で計算し、7分の遅刻を15分として控除する。
・残業代を賞与でまとめて支払う。
などは違反となりますので注意してください。

また、それぞれのルールは、
就業規則に定めておきましょう。
他にも、細かい規定や例外などもありますので、
気になっていることがありましたら、当オフィスにお尋ねください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.34 学生・生徒自殺、初の1000人超【ニュース】 [2012.06.13]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
本日は、ニュース記事からお送りいたします。
日本では、ここ14年連続で、
自殺者の数が3万人を超えています。
この3万人超という方々の命、数字をどう思われますか?

わたくしは地方の出身ですが、
生まれ故郷の「町」の人口は、約15,000人ほどでした。
(現在は合併しております。)
毎年毎年、2つの町が無くなっていることになります。

この話はこれからも取り上げていきますが。
そんな中、8日、政府は24年版「自殺対策白書」を公表し、
2011年の学生・生徒などの自殺者数は、
1,000人を超えたことが分かりました。
「雇用情勢の悪化」を一因に挙げているようです。
ストレス耐性の弱さ、という問題があるとされる中、
社会人となった若者たちに、
「社会人基礎力」をつけてもらう取組をしている我々にとって、
その前の段階で多くの人が命を落としている事実には、
忸怩たる思いがあります。
なんとか別の形で克服を助け、
その先の人生を経験してもらいたいと切に思います。

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2012.6.8 産経新聞

平成23年の自殺者は3万651人と、
10年以来初めて3万1千人を下回ったが、
一方で就職活動の失敗を苦に
10~20代の若者が自殺するケースが目立っていることが
8日、政府が公表した24年版「自殺対策白書」で明らかになった。
白書によると、23年の大学生などの自殺は、
前年比101人増の1029人で、
調査を開始した昭和53年以来初めて千人を突破した。
内閣府は「雇用情勢の悪化」を一因に挙げている。
警察庁の統計では、
「就職失敗」による10~20代の自殺者数は
平成19年の60人から23年は150人にまで増加している。
大学新卒者の就職率(4月1日現在)は
過去最低だった23年の91・0%から
24年は93・6%と4年ぶりに上昇したが
「改善とまではいえない。
実際に80社以上申し込んでも内定が得られないという学生もいる」
(大学関係者)。
全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子代表は
「何度も落ちることで次第に追い込まれ、
『自分には価値がないのではないか』と孤立感を深めていくのでは」
と分析する。
このため心のケアに力を入れる大学も増えている。

千葉県内の私立大の就職課は、
リクルートスーツ姿の学生が目立ち始める1~4月、
学生らの「表情」を気にし始めるという。
「学生が企業と接触し始めるのがこの時期。
厳しい質問に面食らい、ふさぎこむ学生も多いので
積極的に声をかけて励ましている」(担当者)。
都内の中堅大学では
昨年から就職部のスタッフらが4年生全員と面談を実施。
「マイナス思考になりがちな学生には、違った見方もあることを伝え、
気持ちが前向きになるよう丁寧にアドバイスをしていく」という。
厚生労働省も全国57カ所の「新卒応援ハローワーク」で、
内定のないまま卒業した学生のケアを行っている。
同省は
「顔を見せなくなれば、電話やメールで就職活動再開を促している。
学生に寄り添う型の支援がますます重要になってくる」
としている。
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本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.33 有給休暇は何のためにあるか【実例】 [2012.06.12]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)
T氏は、R社の営業部長です。
営業部は、総勢20名、
出張も多く、なかなかのハードワークです。
勤務状況は、いたって真面目、
めったに休むこともなく、部下からの信頼も厚いですね。
有給休暇は、
風邪をひいてしまったときに何度か取得したことがあるぐらいです。
Bさんは、途中入社でR社にやってきた、
経験もある若手のホープ、
すぐにそれなりの営業成績をおさめ、今に至っています。

Bさんの趣味はアウトドア、とくに登山が好きとのこと。
連続の休みがある時は、よく出掛けているようです。

ある日、Bさん、
部長のT氏に、有給休暇の申請をしました。
土日を使い、その前の日である金曜日にも休暇をもらって、
ちょっと遠くの山に登るというのです。
月曜日からは通常の業務があります。
T氏は、驚くと同時にちょっとムカつきました。
今までに、「遊び」で堂々と有休の申請をしてきた社員はいませんでした。

「登山」に行って普通は疲れると思うけれど、
月曜日に仕事に支障はないのか?
そもそも「遊び」のために有休を取るなんてもってのほか!

有休なんて、自分は病気のときぐらいしか取ったことがないし、
有休ってそういうものなんじゃないのか?
病気のときのためにあるんじゃないのか?

ほんとに認めなければならないのか???

有給休暇は、労働基準法第39条に定められている、
「労働者の権利」です。

確かに今までR社では、
「遊び」のために有給休暇を取るという文化はありませんでした。
しかし、有給休暇は、
「労働者の心身をリフレッシュすることを目的とする」ものです。
決して、病気のときのためにあるわけではありません。

もちろん、病気のときにも使えるようになっている会社が多いでしょう。
しかし、有休は通常、前もって時季を指定する必要がありますから、
病気のときに(事後に)使えるように、「会社が」決めているわけです。
一生懸命働いたご褒美に、
心身をリフレッシュするためにあるのが本来の有給休暇なので、
Bさんのように、趣味のために有給休暇を使っても構いませんし、
そもそも、理由によって拒否されるということもありません。
(時季変更権行使などもあり、理由を聞くことは法律での制限はないようです)

ただ、有給休暇を取得する社員の方でも、
業務の繁忙を見極め、お互いに協力し合うことが大事です。
もちろん、休む前、休んだ後は、
しっかり仕事をすることはいうまでもありません。

部長さんが、そんな職場の雰囲気作りも、していってほしいですね。
そんなことで休むなんて、と思う気持ちもよくわかりますが・・・

重要なことがもうひとつ。
会社としては、ある程度、有給休暇を随時、消化してもらった方が、
予想外の出費を防ぐことにもつながったりするのです。
さて、Bさんは、無事に有給休暇も加えて、
山に登って「リフレッシュ」して帰ってきました。
Bさんにとっては、体力は使っても、
仕事と全く別のことをすることによって「リフレッシュ」できるのでしょう。

体力に自信がなければ、
それに合わせて休暇の計画も立てなくてはいけませんよね。
休暇についても、またいろいろお話していきます。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.32 給料の締め日支払日の変更について [2012.06.11]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

給料計算の話が続いたところで、
給料の締日支払の変更について、お話したいと思います。

労働条件通知の際に記載しなければならない必須項目のひとつ、
給与の締め日支払日。
会社の資金繰りやキャッシュフロー上の必要性から、
それを変更しなければならないことがあります。

では、この給与の締め日支払日は会社の任意に変更できるのでしょうか。
賃金については「毎月1回以上、一定期払い」という法則がありますが、
その要件を満たす限り、給与締め日支払日の変更は可能です。
給与の締め日支払日を変更するだけであれば、
給与の減額等の労働条件不利益変更を伴わないからです。
ただし、給与の支払日を後のばしにする場合は、
若干のケアが必要です。
従業員のなかには、毎月の給与から住宅ローン、クレジットカード決済、
車のローン等各種支払いをしている人もいます。
その引き落とし時期に給与支払日変更が影響を及ぼす場合は、
一時払いなどの対応をすることが望ましいでしょう。
例:
毎月15日締め、月末支払いの会社が、
毎月末日締め、翌月15日払いに変えたい場合

既往の労働に対しての賃金はいったん月末に支払い、
翌月15日に新支払日に基づき半月分を支払う。
従業員の中でローン等の関係で月末支払いが多い者には
給与前払いや貸付制度を整備する。
この場合の社内貸付制度を導入する場合は、
会社の都合での給与支払日変更ですから、
利息などはつけない方がよいでしょう。

給与に関する事項については従業員を無視せずに、
個別の事情に応じてスムーズな移行・変更を行ってください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

ひばり通信(ニュースレター)12年6月号を作成いたしました。

ひばり通信6月号表紙
ひばり通信(ニュースレター)12年6月号を作成いたしました。

記事の閲覧をご希望の方は、
恐縮ですが、「お問い合わせ」よりご連絡ください。
メールにてお送りいたします。
(次回より、毎月新号をメールにてお送りします。)
バックナンバーご希望の場合は、その旨をご記載ください。
お役に立ちましたら幸いです。

2012年6月号【目次】

01: 「ぶら下がり社員」の実像を見抜く
02: 社会保険算定基礎届の提出について
03: 業務上事故の使用者責任について
04: (話題のビジネス書) 「ひらがな」で話す技術
07: 労務管理版・内部統制チェックシート

No.31 社会保険料、変更したけれど。【実例】 [2012.06.10]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)
W氏は仕事も人生も経験豊富な営業社員で、
誘われて、ベンチャー企業に立ち上げから参加し、
営業社員として働いています。

会社はまだ安定とはいえず、本部機能もまだ手探りです。

事務系の業務は、最初はベテランさんが来てくれましたが、
現在は、Sさんが担当しています。
事務の経験はあるとのことだったで、事務はひととおり任されていました。
さて、W氏は、家庭の事情もあり、
外に出ることの多い営業から、社長と相談して、
内勤が主の、企画やマネジメントを担当することになりました。
営業手当から業務手当に変更になったため、
給料の額も変更となりました(けっこう下がりました)。
さて、内勤に変わってから初めての給料が出ました。
W氏は、以前に、人事の部門で働いたこともあり、
社会保険料がおかしいことに気付き、
すぐにSさんに電話で伝えました。

Sさんはしかし・・・間違いと言われてもピンときませんでした。
念のため、年金事務所にも聞いてみましたが、
間違いは発見できず、そのままに何もせずに放置。

次の月もその次の月もそのまま。

しびれを切らしたW氏、直接Sさんに訴えました。
Sさんはようやくなんとなくはわかった様子で、
それなりに間違いを直してみました。
Sさんの間違いは、
W氏の給料が下がったことで、
その金額に合わせて社会保険料の等級も変更してしまったというもの。
社会保険料は、変更から4か月目にようやく変更になります。
本来、履歴のわかる「賃金台帳」を見れば、
給料計算のわかる人なら一目見てわかる間違いだったのです。
年金事務所に賃金台帳を持って行って聞けばすぐにわかったのですが、
電話で質問したこともあり、間違いの発見には至りませんでした。
年金事務所は、そこを直してしまうとは思わなかったのでしょう、

あまり経験のない方では、こういう間違いも起こるのですね。

Wさんも、社会保険料がすぐに下がるなら嬉しいことですが、
すぐに下がらないことは知っていたので、
あとから請求されると大変だと思い、Sさんに伝えたわけです。
もし、Wさんでなかったら、気付かなかったかもしれません。
そうすると、Wさんからの社会保険料の控除額は減らしたけれど、
社会保険料は自動振替で支払いますから、
Wさんの負担分も、ずっと会社が負担していた可能性があります。
そして、年金事務所も指摘していませんから、
「月額変更届」も出さず、
Wさんの給料控除だけを変えていた可能性もあります。

会計でも、本来なら「預り金」で処理をしますが、
社員負担分をただマイナスしている会社もありますから、
ここも、通常チェックしていなければ、
気付くきっかけにはなりません。
さて、間違いを直してみたSさんですが、
たまたま経験のある人に見てもらったところ、
残念ながら、直したところにも間違いがありました。
ちょうど、雇用保険料と健康保険料の料率が変更になった時だったのです。
給料ソフトを使っているといえども、
基礎知識がないとなかなか難しいのが給料計算です。
社会保険料だけではなく、残業代など、意外と難しいのです。

当オフィスでは、アウトソージングはもちろんのこと、
新しく事務を担当される方等への研修メニューも用意しています。
(同時に経理も指導できます。)
質問無制限のコースもありますので、
給料計算についても、お気軽にお尋ねください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.30 給料計算の不徹底による損失について [2012.06.09]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
給料計算は、自社でされていますか?
専門家にアウトソージングされているでしょうか?
本日は、給料計算における社会保険について、
その不徹底による損失についてお話します。

社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)や雇用保険料は、
頻繁に見直しや保険料率の改定があります。

そのことは「おぼろげには知っているけれど、徹底はできていない」
そうおっしゃる経営者は、意外に多いように感じます。

少ない金額であるものの、塵も積もればバカにはできません。
実際のケーススタディを見ながら、損失の程度を見ていきましょう。

【菓子製造業 Y社の例】

<会社データ>
株式会社Y社
業種    :菓子製造業
従業員数    :15名
※10名が社会保険加入、残りパート

標準報酬月額の内訳:平成23年9月~
社長62万円、マネージャ(1名)41万円、社員24万円
※全員40歳未満
<発生したミスの内容>
平成22年6月にマネージャの給料を36万から41万へ変更したものの、
天引きする保険料を変更しなかった。

また、平成22年9月以後、全員分について
(法令その他による毎年の)保険料天引き額の変更をしなかった。
【検証してみましょう】

それでは、このミスに関して、
平成23年9月現在の保険料控除の差額を検証してみましょう。
<ポイント1>

平成23年3月の健康保険料改定に不対応(9.32%→9.48%)

標準報酬総額2,950千円 × 0.16% ÷ 2 × 6ヶ月= 14,160円

<ポイント2>

平成22年9月の厚生年金保険料改定に不対応(15.704%→16.058%)

標準報酬総額2,950千円 × 0.354% ÷ 2 × 12ヶ月 = 62,658円

<ポイント3>

マネージャの月額変更に対し、保険料を改定せず

(410千円-360千円 )× 12.512% × 12ヶ月= 75,072円

合計額:151,890円
この差額151,890円は
、設定条件における「従業員からの天引き漏れ」の年間の総額です。
これは、つまり、
予定外の法定福利費を負担していることを意味しています。

この金額は、Y社のメイン商品(水菓子@300円)に換算すると、
実に506個もの廃棄処理をした計算になります。
いくら日々の商品の取り扱いに厳しく目を光らせていても、
給与計算ミスにより
これだけのロスを生むことは
看過できないといえるのではないでしょうか。
社会保険料の改定については、専門家からの情報提供を継続的に受け、
給与計算額のチェックを受けることが出来るよう
仕組み作りしておくことが大切です。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.29 雇用保険料の内訳・構造 [2012.06.08]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
労働保険の年度更新の時期でもありますので、
そちらに関連して、
本日は、そのうちの雇用保険についてご説明します。
一般に「失業保険」という呼び名で認識されていることから、
従業員が退職したときの失業保険のために納めている、
という感覚があります。
しかし本当にそれだけのためのものなのでしょうか。

その保険料内訳やお金の行き先についてはあまり知られていないことから、
今回はこの雇用保険料の内訳と構造について説明します。

1.雇用保険料は会社と従業員で分け合う

雇用保険料は、会社に対して「年度ごとに」かかります。
その計算方法は以下の通りです。

その年度の賃金算定基礎額 × 雇用保険料率

つまり、雇用保険加入者に支払う賃金総額に、雇用保険料率をかけてもとめます。
この雇用保険料率は、年度はじめに見直しがなされることがあります。
(平成24年4月からは雇用保険料率が少し下がりました。)

現在、一般の事業の場合、1,000分の13.5(つまり1.35%)
というのがその率です。

そしてこの1,000分の13.5のうち、
1,000分の5(0.5%)が従業員負担分
1,000分の8.5(0.85%)が会社負担分
という内訳になっています。

例えば給与20万円の人の場合
従業員は1,000円の負担
会社は1,700円の負担
ということになります。

会社のほうが600円多く負担していますね。
ではこの多く負担している分は何なのでしょうか。

2.助成金等事業のため、会社負担分が少し多い

実はこの会社が多く負担している分は
「雇用保険二事業」といういわゆる助成金などの財源にあてられます。

人を採用したり、解雇を防いで継続雇用をしたりといった
「雇用の安定のために」なることをしてくれた企業に対して、
助成金制度により再分配をしている構造になっています。

言い方をかえると、
「助成金を活用しない企業」が「助成金をよく活用している企業」のために
保険料を負担しているという性格があります。

無理に要件に該当させることはありませんが、
自社に助成金受給の資格があるならば、積極的に活用したい制度ですね。
どのような助成金があるか、該当するか、
お気軽にお問い合わせください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。
No.28 社会保険料決定・変更のしくみ②≪「定時」「随時」どちらに該当?≫   [2012.06.07]
こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
昨日、
社会保険料の決定・変更のしくみについての概要をお伝えしましたが、
算定基礎届(定時決定)の時期ですので、関連して、
1点、補足させていただきたいと思います。
「算定基礎届」と「月額変更届」の、
どちらに該当するのかを考える必要がある場合です。
1年に1回、被保険者の標準報酬月額の見直しを図るのが、
「社会保険料算定基礎届」の提出によるもの(定時決定)です。

これは、4・5・6月の給料の平均額を使用します。
この改定は、毎年9月分の保険料から反映されます。
(ほとんどの事業所様で、
10月分の給料から天引きし、10月末に納付する分です。)

これに対し、給与に大きな変動があった場合、
(昇給などにより急激に給与が変わってしまった場合、)
例外的に年の途中でも変更します。

これを「報酬月額変更」といい(「月額変更届」を提出します)、
昇給月から4か月目に変わります。
大きな変動とは、社会保険等級上2等級以上の変動を指します。

ところで、4月から給料が変更になる企業様・事業所様も多いと思います。
大きな変動があった場合、
「算定基礎(定時決定)」があるからそちらを提出すれば大丈夫、
とはいかないので、注意をしてください。
つまり、
4月に昇給して、
大きな変動(2等級以上)があった場合は、
4・5・6月の給料をもとに、
7月の社会保険料(通常8月の給料から控除する)から変更となります。
算定基礎による変更が反映されるのは9月保険料からなので、
そちらよりも早く変更となるのです。

例を出してみましょう。
①3月までの給料が30万円で、「標準報酬月額」も30万円の方が、
4月からの給料が32万円になった場合

4・5・6月の給料32万円×3=96万円
→平均32万円→標準報酬月額32万円
☆変動は1等級なので、「算定基礎届」の提出により、9月保険料より変更
②3月までの給料が30万円で、「標準報酬月額」も30万円の方が、
4月からの給料が35万円になった場合

4・5・6月の給料35万円×3=105万円
→平均35万円→標準報酬月額36万円
★変動は3等級なので、「月額変更届」を提出、7月保険料より変更
なお、大きな変動といっても、
「基本給」などの「固定給」の変更が条件となり、
固定給はそのままで、残業手当などが増えた、というような場合は、
「月額変更」(随時決定)には該当しません。
「固定給」が増えても、残業手当などの状況により、
平均額が減る場合もあります。
そのような場合には、
ずっと同じ標準報酬というわけにはいかず、
「定時決定」によって、少なくとも1年に1回は見直しを図るのです。
昇給月は4月に限りませんし、いろいろなパターンがあります。
あるいは降給となる場合もあります。
詳しくは当オフィスまでお気軽にお尋ねください。
本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。
No.27 社会保険料決定・変更のしくみ①≪算定基礎届など≫   [2012.06.06]
こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
そろそろお役所から、「算定基礎届」のセットが届いていることと思います。
(年金事務所)

今回は、そちらに関連して、
社会保険料の決定・変更のしくみについてお伝えいたします。

社会保険料の変更には、2つのタイミングがあります。
①毎年見直すタイミング
②給与額により定時に見直すタイミング

少し詳しくみていきましょう。

①【毎年見直すタイミング】

1年に1回、被保険者の標準報酬月額の見直しを図るのが
「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」で、
「定時決定」ともいい、
提出期限は7月10日となっています。

社会保険料とは、
「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」の三つを指しますが、
このうち「健康保険料」「介護保険料」は、
加入している人の人数と、医療費(または介護に要する費用)の、
使い方のバランスです。

もっと端的にいうと
「保健制度のお財布事情」により毎年3月に見直しをします。
近年は平均寿命の延びや加入人数の減少などにより上がることが多いです。

一方で「厚生年金保険料」については、
平成29年まで「毎年上げる」ことが決まっています。
これは平成16年の法律改正時に、
「年金のお財布事情が悪いから、当面保険料率を上げ続けよう」
と決まったことによります。

そのため、毎年同額の報酬であっても、厚生年金保険料は上がり続けます。
毎年の見直しは、
前述した「社会保険料算定基礎届」の提出により変更するものです。

これは、
「毎月保険料をコロコロかえると面倒だから、
年1回、4・5・6月の給料の平均額を『むこう一年の給与額』とみなして、
1年間保険料も変えずにいこう」
という意味合いのものです。

この改定が、毎年9月分の保険料から反映されます。
ちなみに、介護保険料について
【介護保険料の給与天引き】
介護保険料を給与から天引きするのは「40歳~65歳」と決まっています。
また、厚生年金は70歳までと決まっています。
この年齢を境に、各自の保険料が変わります。

②【給与に大きな変動があった場合】

社会保険料(に係る等級)は、原則1年間据え置きますが、
昇給などにより急激に給与が変わってしまった場合、
現状に合わせるべく例外的に途中で変えます。

これを「報酬月額変更」といい、昇給月から4か月目に変わります。
大きな変動とは、社会保険等級上2等級以上の変動を指します。
いかがでしょうか?
社会保険料が変更する仕組みについて、ご理解いただけましたでしょうか。

この文章は、わかりやすくするために表現方法を単純化しており、
一部補足説明が必要な個所があります。
詳しくは当オフィスまでお気軽にお尋ねください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。
No.25 労働保険年度更新の基礎知識   [2012.06.04]
こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
労働保険の年度更新の時期になりました。
そろそろ、労働局からの書類が届いているころだと思います。
労働保険(労災保険と雇用保険)は、
毎年4月1日から翌年3月31日までを一区切りとして申告納付をします。
申告は6月1日から7月10日までとなっておりますが、
まだ取組されてない会社様もおありかと思います。

本日は、
労働保険の申告納付処理=労働保険の年度更新の基礎知識をお伝えします。

【保険料の計算方法】

労働保険料は、
企業全体の「年度の賃金総額」に保険料率を乗じて計算します。
そして、以下の処理を年度ごとに連続して行うことで申告・納付します。

① 年度の初めに概算払いをして
② 年度末を過ぎたら確定精算をする

つまり、年度更新とは、
「前年度の確定精算」と「新年度の概算計算」を同時に行う行為を指します。
通常は概算額と確定額は一致しないため、
その差額を、
翌年度の概算保険料と差し引き調整(充当・還付または追加納付)します。

例)平成23年4月1日に労働保険に加入した企業の場合

条件:飲食業、従業員10名、全員が労災および雇用保険に加入、
年間賃金総額見込み3,000万円、実際の賃金総額2,700万円
① 概算払い
3,000万円 ×(労災保険料率3/1,000 + 雇用保険料率15.5/1,000)
=555,000円

② H24年4月1日を迎えたら確定精算
2,700万円 × 18.5/1,000 =499,500円

①-②=55,500円を払い過ぎたため、
翌年度の概算保険料から55,500円を差し引いて納付する。
【計算式から導き出せる計算ミス防止のポイント】

前項で取り上げたように、
労働保険料の計算式は賃金総額に保険料率を乗じる
シンプルな構造になっています。

毎月の給与計算で会社がいくら雇用保険料を天引きしたかに関わらず、
単純に計算をします。

このことから、
計算ミスをする箇所は以下のふたつに大別されることがわかります。
<間違えてしまうポイント>
① 賃金総額を間違える
② 保険料率を間違える

以下に上記①②の間違いやすいポイントを列挙します。
自社で年度更新処理をされている企業様は、ご参考ください。
《賃金総額を間違える》
・雇用保険加入者の賃金をすべて算入していない
・賞与を賃金に算入していない
・アルバイトの賃金を労災の賃金総額に算入していない
・64歳以上の雇用保険料免除者の賃金を誤って算入している
・年度途中で雇用保険上の異動(資格取得・喪失)があったにもかかわらず
反映させていない

《保険料率を間違える》
・登録した産業分類が誤っている
(建設業なのに不動産業で登録している、など)
・法改正による保険料率の変更を反映させていない※
※なお、このたび平成24年4月以降の労働保険料率が改定され、
例えば雇用保険料率では一般事業で
15.5/1,000から13.5/1,000に下がることになりました。

労働保険の年度更新については、当オフィスまでお気軽にご相談ください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。
No.22 残業代をめぐるトラブルの防止策②   [2012.06.01]
こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。
昨日取り上げた「残業代をめぐるリスク」を軽減させるためには、
具体的にどのような対策が有効でしょうか。

本日は、リスク軽減の具体的方法を

1.「業務効率化的アプローチ」
2.「就業規則・給与支払的アプローチ」

の、2つからご紹介します。
1.【業務効率化的アプローチ】

まずは「業務効率化により残業時間そのものを軽減させる」
視点で可能性を検討しなければなりません。

例えばサービス業であるならば、時間帯ごとの業務量を定量測定し、
繁閑に合わせて労働時間・休憩時間を配置するシフトを
組むことができないでしょうか。

あるいは「ノー残業デー」などの強制的な時間短縮も、
業種によっては生産性を落とさずに導入できるかもしれません。
ご存知の方も多いと思いますが、
下着メーカー「トリンプ」では、午後12時30分から2時間を
「がんばるタイム」と社内外に公言し、
その時間帯は電話(緊急のものを除く)に出ずひたすら事務処理をするそうです。
残業そのものを減らす取り組みは、
会社の人件費圧縮と従業員の生活充実の
両面に寄与する善的アプローチであることを、今一度考えましょう。
2.【就業規則・給与支払的アプローチ】

1.の、「業務効率化的アプローチ」の業務効率化による時間短縮効果が
短期的に見込めない場合や、
営業形態から時間削減が難しい場合は、
会社の制度の見直しをするアプローチが検討できます。
現状の給与支払項目の中で、
「恒常的な残業の対価ととらえることができる手当」を洗い出し、
「残業手当を固定的に支給するもの」と再定義することで、
「恒常的残業に対するケアが出来ている状態」
に整える取組み等、がこれに当たります。
<事例>株式会社Y(リフォーム販売業)の場合

・週40時間労働制
・営業社員Aの給与細目

総支給26万円:基本給20万円、職務手当5万円
通勤手当月額1万円

このうち「職務手当」は、
営業社員に対して支給される手当であり、
営業社員の恒常的な残業をケアする意味合いがありました。

そこで、就業規則(賃金規程)において、
これを「固定残業手当」と再定義し、
同時に社員Aとの間で、
この固定残業手当を記載した雇用契約書を再度取り交わしました。

その結果、社員Aさんについて、
月々5万円の残業手当が合法的に支払われている状態が整ったことになります。

固定残業手当額から逆算すると、以下の式により、
34.6時間分の残業手当が支払われていることになります。
基本給20万円 ÷ 173時間(月間所定労働時間)× 1.25
≒ 1,445円(残業単価)

5万円 ÷ 1,445円 ≒ 34.6時間
このアプローチを行うためには、以下3つが特に重要になります。
1.就業規則等に根拠があるか
2.労働者本人の同意が得られているか
3.給与明細等の上で固定的残業である旨明記されているか

固定残業手当の導入は、当オフィスにお気軽にご相談ください。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。