No.26 結婚休暇を取ったら給料が引かれて・・・【実例】 [2012.06.05]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)
Fさん(♀ 32歳)は、
「株式会社NJ」の営業担当社員です。
社歴は浅いですが、前職での経験も大いに活かし、
会社からも頼りにされています。

出張が多く、会社にいることは少ないのですが、
事務担当のCさん(♀ 26歳)とはとても仲がいいです。
株式会社NJは創業して3年で、
メンバーは、社長、役員、Fさん、Cさん、アルバイトさん。
資金が潤沢とはいえませんが、なんとか維持成長をしています。
さて、仕事に打ち込んできたFさんですが、
かねてからお付き合いをしている方と、結婚が決まりました。
会社に報告すると、大変祝福をいただきました。
結婚式(披露宴)には社長が主賓で出席、スピーチもいただき、
役員、Cさんも出席しました。

Fさんは、結婚式後、新婚旅行にも出掛け、
会社は1週間のお休みをいただきました。
土曜日が結婚式、日曜はゆっくりして、月曜~金曜が旅行、
土日は普通にお休みですが、新居の準備がいろいろです。
それからしばらく経ったある日のこと。
Fさんが突然、Cさんに訴えました。
「ちょっと聞いてよ~。
給料が、1週間分、引かれてたのよっ! ひどいと思わない?!
自分の結婚よ? 特別休暇とかあるんじゃないの?!」

残念ながら、Cさんは、驚いただけで、
何も答えてあげることはできませんでした。

————-
特別休暇(慶弔に関するものなど)とは、
多くの会社で採用しており、
一般的に、
年次有給休暇とは別に、その理由の時に、有給で休暇を与えるものです。

結論からいうと、
法律の制限などはなく、会社があくまで任意で決められるものですので、
休んだ日に、給料を引くことは問題ありません。

休暇については、文書で明示することが必要なので(コラムNo.24)、
入社時に、
他の休日・休暇の説明と一緒に、説明する方がいいでしょう。
(定めた上で、無給とすることもできます。)

特に、創業したばかりの会社では、
途中入社の社員が多いはずですので、
「前職はこうだった」という者が必ず出てきます。
また、このFさんのケースでは、
結婚する旨の報告を受けた際に、
「休んだ分は、給料は払わない」ことを説明するとよかったかもしれません。

心情的には・・・多少の特別休暇は、あった方がいいと考えています。
もちろん、大企業の真似をしてはいけませんが。
————-

Fさんは、同じ調子で、いろんな人に自分の不満を訴えました。
何人か話したところで、
ようやく、自分の主張が、
必ずしも正しくない、ということがわかってきました。

もう少し丁寧に、話をすべきだったと思いますし、
会社ももう少し丁寧に説明してくれたら・・・
日程をもっと工夫したら、2日~3日は休暇を短縮できたのに・・・
今となっては言ってもしかたないですね。

ちなみに、
Fさんは、有給休暇は使えなかったのでしょうか?
残念ながら、このころはまだ、入社1年経過しての付与でしたので、
Fさんは、有給休暇の発生まで、あと1か月ありました。
今後も、有給休暇、特別休暇などについて、随時お話させていただきます。

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.25 労働保険年度更新の基礎知識 [2012.06.04]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

労働保険の年度更新の時期になりました。
そろそろ、労働局からの書類が届いているころだと思います。

労働保険(労災保険と雇用保険)は、
毎年4月1日から翌年3月31日までを一区切りとして申告納付をします。
申告は6月1日から7月10日までとなっておりますが、
まだ取組されてない会社様もおありかと思います。

本日は、
労働保険の申告納付処理=労働保険の年度更新の基礎知識をお伝えします。

 

【保険料の計算方法】

労働保険料は、
企業全体の「年度の賃金総額」に保険料率を乗じて計算します。
そして、以下の処理を年度ごとに連続して行うことで申告・納付します。

① 年度の初めに概算払いをして
② 年度末を過ぎたら確定精算をする

つまり、年度更新とは、
「前年度の確定精算」と「新年度の概算計算」を同時に行う行為を指します。

 

通常は概算額と確定額は一致しないため、
その差額を、
翌年度の概算保険料と差し引き調整(充当・還付または追加納付)します。

 

例)平成23年4月1日に労働保険に加入した企業の場合

条件:飲食業、従業員10名、全員が労災および雇用保険に加入、
年間賃金総額見込み3,000万円、実際の賃金総額2,700万円

 

① 概算払い
3,000万円 ×(労災保険料率3/1,000 + 雇用保険料率15.5/1,000)
=555,000円

② H24年4月1日を迎えたら確定精算
2,700万円 × 18.5/1,000 =499,500円

①-②=55,500円を払い過ぎたため、

翌年度の概算保険料から55,500円を差し引いて納付する。

 

【計算式から導き出せる計算ミス防止のポイント】

前項で取り上げたように、
労働保険料の計算式は賃金総額に保険料率を乗じる
シンプルな構造になっています。

毎月の給与計算で会社がいくら雇用保険料を天引きしたかに関わらず、
単純に計算をします。

このことから、
計算ミスをする箇所は以下のふたつに大別されることがわかります。

 

<間違えてしまうポイント>
① 賃金総額を間違える
② 保険料率を間違える

以下に上記①②の間違いやすいポイントを列挙します。
自社で年度更新処理をされている企業様は、ご参考ください。

 

《賃金総額を間違える》
・雇用保険加入者の賃金をすべて算入していない
・賞与を賃金に算入していない
・アルバイトの賃金を労災の賃金総額に算入していない
・64歳以上の雇用保険料免除者の賃金を誤って算入している
・年度途中で雇用保険上の異動(資格取得・喪失)があったにもかかわらず
反映させていない

《保険料率を間違える》
・登録した産業分類が誤っている
(建設業なのに不動産業で登録している、など)
・法改正による保険料率の変更を反映させていない※

 

※なお、このたび平成24年4月以降の労働保険料率が改定され、
例えば雇用保険料率では一般事業で
15.5/1,000から13.5/1,000に下がることになりました。

労働保険の年度更新については、当オフィスまでお気軽にご相談ください。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.24 「雇用契約書」が大切な理由② [2012.06.03]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

雇用契約書には法令上の決まりがあり、
またトラブル回避のためにリスクポイントを押さえた内容にする必要があります。
昨日に引き続き、Q&A方式で重要な点を紹介していきます。

 

【Q1】雇用契約書には、どんな項目を記載すればよいでしょうか。
【A1】雇用契約書(労働条件通知書)には、
「絶対に書かなければならないこと」と
「決まりがあるなら明示しなければならないこと」があります。

 

<絶対に書かなければならないこと>
(絶対的明示事項)

・雇用契約期間・更新の有無、更新の判断基準
・就業場所、転勤の可能性の有無、従事する職種
・始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇
・所定時間を超える労働の有無
・交代制について(交代制がある場合)
・賃金額、計算及び支払方法、賃金締日支払日
・昇給について ※1
・定年・継続雇用等 ・退職について(解雇の事由を含む)
※1 昇給については、口頭で明示してもよい。

 

<決まりがあるなら明示しなければならないこと>
(相対的明示事項)※2
・退職金、賞与その他臨時に支払われる賃金
・労働者に負担させる食費や作業用品
・安全及び衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償及び業務外の傷病補助に関する事項
・表彰及び制裁に関する事項
・休職に関する事項
※2相対的明示事項は、口頭で明示してもよい。

 

雇用契約書について、
これらの項目が記載されているかを確認してみて下さい。

 

【Q2】今まで雇用契約書を取り交わしていなかったのですが、
今後パートも含め全員分の雇用契約書を整備したいと考えています。
入社後相当年数経過している従業員との雇用契約締結は、
どのように進めればよいでしょうか。

【A2】入社後相当年数経過した従業員との雇用契約については、
例えば「新事業年度」「新年」「組織変更等の日」など
切りのよいタイミングでの一斉整備をご検討ください。

 

既存の従業員の中には、
入社から何度も賃金など労働条件が変わっている方もいますので、
入社時に遡って雇用契約を締結することが困難です。

そのような場合は、従業員の納得性が高い日付から
「改めて今後の労働条件はこうです」と雇用契約を結ぶと良いでしょう。

ただし、企業規模や既存社員の方の勤続年数によっては、
「なぜ今さら雇用契約書を結ぶのか?」といった
警戒・反発・不審を招く可能性もありますので、
雇用契約書整備は慎重に進める必要があります。

また、雇用契約書は、
就業規則との整合性についても注意しなければなりません。
雇用契約書と就業規則との間にズレや矛盾はないか、
併せて検討していくことが必要です。

 

雇用契約書については、当オフィスにお気軽にご相談ください。

 

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.23 「雇用契約書」が大切な理由① [2012.06.02]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

「雇用契約書」が大切であるというお話は何度かさせていただきましたが、
残業代をめぐる問題から、雇用契約書について取り上げましたので、
本日、明日は、「雇用契約書」について詳しいお話をさせていただきます。

雇用契約書についてよく寄せられるご質問をQ&A方式で紹介していきます。

 

【Q1】雇用契約書を特に取り交わしていませんが、大丈夫ですか?
【A1】雇用契約書は、法律的見地、及び労使トラブル回避のため
作成するべきです

 

<法律的見地>
雇用契約≒労働契約は、
労使当事者間の合意のみによって成立する契約であり、
口頭での約束でも成立しますが、
労働基準法上
「賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。
(労基法第15条1項)

特に「契約期間」「就業場所」「賃金」「退職」などの重要事項は、
書面により明示するよう定められています。

労働諸条件について合意があったことを記録する意味でも、
労使双方の捺印等のある雇用契約書を取り交わしたほうが望ましいでしょう。

 

<労使トラブル回避>
契約期間や契約更新の有無、転勤可能性、解雇に関する事項や
賃金、固定残業代などの「トラブルになりやすい事柄」について、
契約締結時に合意がなされたという書面を取り交わしておくことで、
のちの労使トラブルを回避・軽減することができます。

 

【Q2】雇用契約書がない(あるいは整備不十分)ことで、
具体的にどんなトラブルがあるのでしょうか?
【A2】「契約期間、契約更新」「転勤」「退職・解雇」「賃金・賞与・残業代」
が挙げられます

 

<詳細説明・トラブル例>

≪契約期間・契約更新≫
働きの悪い社員を契約期間満了として取り扱いたいが、
自動更新状態であったり、
契約更新の判断基準について決めていなかったためできなかった

≪転勤≫
転勤を社員に命令したが拒否され、
雇用契約書上で転勤の可能性の記載がなかったためできなかった

≪退職・解雇≫
定年について明記しておらず、
就業規則もない会社において、慣例により60歳定年を申し渡したが、
労働者が継続雇用を申し出て、労使関係が悪化した

≪賃金・賞与・残業代≫
賞与について「就業規則による」と定めており、
就業規則で「経営状態悪化時の賞与減額または不支給」
について定めておらず、賞与の減額ができなかった

 

雇用契約書には上記のようなトラブルの種があるため、
企業側は特に注意してその作成をすすめる必要があります。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.22 残業代をめぐるトラブルの防止策② [2012.06.01]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

昨日取り上げた「残業代をめぐるリスク」を軽減させるためには、
具体的にどのような対策が有効でしょうか。

本日は、リスク軽減の具体的方法を

1.「業務効率化的アプローチ」
2.「就業規則・給与支払的アプローチ」

の、2つからご紹介します。

 

1.【業務効率化的アプローチ】

まずは「業務効率化により残業時間そのものを軽減させる」
視点で可能性を検討しなければなりません。

例えばサービス業であるならば、時間帯ごとの業務量を定量測定し、
繁閑に合わせて労働時間・休憩時間を配置するシフトを
組むことができないでしょうか。

あるいは「ノー残業デー」などの強制的な時間短縮も、
業種によっては生産性を落とさずに導入できるかもしれません。

 

ご存知の方も多いと思いますが、
下着メーカー「トリンプ」では、午後12時30分から2時間を
「がんばるタイム」と社内外に公言し、
その時間帯は電話(緊急のものを除く)に出ずひたすら事務処理をするそうです。

 

残業そのものを減らす取り組みは、
会社の人件費圧縮と従業員の生活充実の
両面に寄与する善的アプローチであることを、今一度考えましょう。

 

2.【就業規則・給与支払的アプローチ】

1.の、「業務効率化的アプローチ」の業務効率化による時間短縮効果が
短期的に見込めない場合や、
営業形態から時間削減が難しい場合は、
会社の制度の見直しをするアプローチが検討できます。

 

現状の給与支払項目の中で、
「恒常的な残業の対価ととらえることができる手当」を洗い出し、
「残業手当を固定的に支給するもの」と再定義することで、
「恒常的残業に対するケアが出来ている状態」
に整える取組み等、がこれに当たります。

 

<事例>株式会社Y(リフォーム販売業)の場合

・週40時間労働制
・営業社員Aの給与細目

総支給26万円:基本給20万円、職務手当5万円
通勤手当月額1万円

このうち「職務手当」は、
営業社員に対して支給される手当であり、
営業社員の恒常的な残業をケアする意味合いがありました。

そこで、就業規則(賃金規程)において、
これを「固定残業手当」と再定義し、
同時に社員Aとの間で、
この固定残業手当を記載した雇用契約書を再度取り交わしました。

その結果、社員Aさんについて、
月々5万円の残業手当が合法的に支払われている状態が整ったことになります。

固定残業手当額から逆算すると、以下の式により、
34.6時間分の残業手当が支払われていることになります。

 

基本給20万円 ÷ 173時間(月間所定労働時間)× 1.25
≒ 1,445円(残業単価)

5万円 ÷ 1,445円 ≒ 34.6時間

 

このアプローチを行うためには、以下3つが特に重要になります。

 

1.就業規則等に根拠があるか
2.労働者本人の同意が得られているか
3.給与明細等の上で固定的残業である旨明記されているか

 

固定残業手当の導入は、当オフィスにお気軽にご相談ください。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.21 残業代をめぐるトラブルの防止策① [2012.05.31]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

一昨日に、未払い残業代についての、
ちょっと大きな問題がニュースで出ましたので、
昨日は、その記事についてお伝えしました。

本日、明日にかけて、
「残業代をめぐるトラブルの防止策」について取り上げたいと思います。

 

退職した労働者からの未払い残業代は、
予期せぬ一般管理費の増加をもたらし、会社の収益にダイレクトに影響します。
(今般の飲食チェーンでは、5億円と言われていましたね。)

そればかりでなく、
折衝や裁判などにかかる時間的・精神的コストをも併発させるため、
経営者や労務管理担当者の頭を悩ませる問題となります。

 

【株式会社 G社の例】

平成23年1月、前月末日付で退職した社員Aから内容証明郵便が届きました。
過去2年間の未払残業代合計250万円を支払うよう求めた内容のものでした。

指定期日までに支払わない場合、公的機関に訴え出る旨記載されています。 *******************************************************
業種:システム開発業
従業員数:10名
年間総人件費:3,000万円

勤怠管理:出勤時間、退勤時間を記入しない押印型出勤簿
所定の勤務時間:9時~18時(8時間)、月あたり平均20日の出勤日

残業状況:社員によってまちまちだが、
ほとんどの社員が、恒常的に一日3時間程度の残業あり
残業代に関する説明:
雇用契約書はなく、採用時に口頭にて「残業代は給与に含まれる」旨を伝達

 

社員Aの給与:
基本給20万円、職務手当2万円、通勤手当月額1万円、在籍期間3年

********************************************************

【社員Aの主張は正当なのか?】

<勤怠管理の側面>
社員Aの主張の正当性を確かめるためには、
まずは実際の残業時間を把握する必要があります。

この会社では「出」「欠」の印を押印する簡易的な勤怠管理をしており、
残業時間をそこから読み取ることはできません。

だからといって会社は、
「相手の主張には根拠がない」と決めつけることもできません。
なぜなら、出勤簿以外にも、
「パソコンのログアウト時刻」や
「帰宅時間に関する本人や家族の主張・メモ書きなど」も
場合によっては証拠能力があるとみなされるからです。

 

<残業代に関する説明の側面>
この会社では、残業代は給与に含まれる旨口頭で説明していたに過ぎず、
雇用契約書や給与明細書上に残業を支払った記載がありませんので、
残業代が給与に含まれていることを主張するには十分でありません。

 

<2年遡及請求の側面>
賃金債権の請求時効は2年と定められていますので、法的根拠があります。

 

【計算根拠】
以上のことから、仮に社員Aの1日の残業時間が平均3時間だと仮定して
過去2年の残業代を計算すると以下のようになります。

*********************************************************
総残業時間:3時間×月20日×24か月=1,440時間
残業の単価:約1,719円
残業代総計:2,475,360円 *********************************************************

社員Aの主張は、概ねこのような計算根拠を持っていると予想されます。

 

【会社は何をポイントに対策すべきか】

250万円と言えば、株式会社Yの年間人件費の実に8.3%に当たります。

その8.3%増は、
「それが生産的な残業であったか」を問わずに会社にのしかかってきます。

会社側が行うべき対策として、「残業代リスク診断」を活用し、
まずは自社でのリスクポイントを整理しましょう。

明日は、具体的なトラブル防止策をお届けします。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.20 「労働基準法違反(割増賃金不払い)」容疑で書類送検へ【ニュース】 [2012.05.30]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

本日は、昨日のニュースで流れました、
飲食チェーンの「残業未払い」問題からお伝えします。

 

以下、毎日新聞(5月29日)の記事からの引用です。

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和食チェーン「がんこフードサービス」(本社・大阪市淀川区)が
店の従業員に残業手当や深夜労働の割増賃金を支払っていなかった問題で、
未払い分の総額が過去2年間で計約5億円に上ることがわかった。

大阪労働局は29日にも、労働基準法違反(割増賃金不払い)容疑で
同社と志賀茂社長ら幹部を書類送検する。

関係者によると、 労基法では残業手当や午後10時以降の賃金は
通常賃金から25%割り増しして支払わなければならないとされているが、
約3500人の全従業員のうち正社員だけで約600人について未払いがあり、
現在、支払いを進めているという。

同労働局は内部通報に基づいて昨年12月、
大阪府岸和田市の「岸和田五風荘店」や本社などを捜索し、
未払いの全容を調べていた。

同社は近畿を中心に92店舗を展開しており、
昨年7月期の売上高は約215億円。
小嶋淳司会長は大阪商工会議所の副会頭を務めている。

同社人事部は「捜査中のため現時点ではお答えできない」としている。

———————

 

今回の捜査は、内部通報によるもののようです。

一人一人の残業時間・残業代は、
過酷労働と言うほどのものではないようです。
しかしながら、今回の件は、店舗数・従業員数も多いため、
2年の遡りを受け(賃金の請求の時効が2年間とされているため)、
未払いの金額が5億円という大きい金額になっています。

 

その金額の大きさも大変ですが、
今回は、「労働基準法違反」での「書類送検」ということになりました。
「労働基準法違反」は、逮捕、送検もあり得るのです。

労働時間・未払い残業の問題は、意図的な違反もありますが、
法律を詳しく知らなかったり、勘違いしていることにより、
いつの間にか違反していることも多くあります。

 

これを機会に、労働時間や残業など、チェックされてはいかがでしょうか。
制度と運用の両面から、ご提案いたします。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

 

No.19 休業期間を有給とするのか?【実例】より考察 [2012.05.29]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

本日は、昨日の実例の続きで、説明をしていきたいと思います。

【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)

 

「株式会社MM」では、創業したての時、
「総務担当のK氏」が、
前職であるB社(従業員5000人)の就業規則を参考に、
株式会社MMの就業規則を作成しました。

 

しかしながら、
資金力に余裕のある大きな企業ならではの、
従業員にとって有利な、
小さな、新しい会社にとってはとてもキビシイ制度が多く作られていました。

 

前回お話した、「私傷病等による休職制度」について、

コラムの「No.17」でもお伝えしたように、

中小企業では、私傷病等での休職期間は、
1~3か月程度が多いようです。
休職制度は、法律で決められている制度ではありませんので、
必ず必要ではないのですが、ある程度の期間、設定する会社が多いです。

そこで、K氏が設定した休職期間は3年。
中小企業にとっては、やはり長すぎるといえるでしょう。
また、それなりの勤続をしている従業員に対し、
すぐに辞めてもらうのも・・・というような趣旨があるので、
入社してどれぐらいかの期間は、休職を認めないとしてもよいでしょう。

また、休業期間中は無給であることをわかりやすく定め、
社会保険料などの負担についてや、
復職や自然退職(また別途ご説明しましょう)についても規定しておきましょう。

 

その他に、最初の就業規則には、中小企業にとっては難しい部分がありました。

 

例えば、
産前産後の休業、育児休業などの期間、
希望した従業員は、「有給で休業させる」となっていました。
(産前産後の休業は「労働基準法第65条」によります。)

大企業の場合は、大抵、自前で健康保険組合を持っており、
産前産後の休業時に、給料を出すのか健康保険の出産手当金を出すのか、
まあ、どちらでもそう変わらない(もちろん厳密ではありませんが)、
という事情がありますが、

中小企業は、「協会けんぽ」などの健康保険が多いので、
会社からは無給として、健康保険の出産手当金を使えるように手配します。

 

育児休業も、全額ではありませんが、
雇用保険から休業給付が出ますので、
会社からは無給として、そちらを使ってもらうのが自然かと思います。

 

いろいろ、おいおい・・・説明させていただきますね。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.18 適切な休職期間は?【実例】 [2012.05.28]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

本日は、実例からお送りします。

【実例】(設定は、実際とは少し変えています。)

 

「M社長」は、「B株式会社」(従業員5千人)を早期退職し、
自身で「株式会社MM」を興したばかりです。

新卒でB株式会社に入って以来、営業畑で活躍、
営業部長も任され、部下を育て、その信任も得ていました。
M氏が起業するなら一緒にやりたい、という仲間も多くいました。

 

まずは、同じ会社出身の、
「総務担当のK氏」と、「営業担当のF氏」で業務をスタート。

M社長は、事務系の業務は苦手で、
営業戦略を練って、F氏とともに営業活動を始めましたが、
事務まわりは、総務部で役職も務めたことのあるK氏に任せました。

次月にはそれなりの人員で本格スタートすることにしたので、
K氏は、いろいろと準備を進め、
「就業規則」も作成することにしました。

K氏は、前職で「就業規則」の作成にもかかわったことがあります。

 

本格スタートを迎え、
「就業規則」の件は、K氏にすべて任せました。
従業員代表には、営業担当のF氏が立候補し、
他の従業員からも賛同を得ましたので、無事に届出も済ませました。

 

数か月が経って・・・

 

K氏が体調を崩してしまい、診断書の提出も受けました。

立ち上げから一緒にやってきた幹部です。
M社長も、休職制度があることは知っていましたので、
しばらく休んで療養に努めてもらおうと思い、「就業規則」を見ました。

 

「私傷病による休職期間・・・3年」

 

さ、さんねん?

 

K氏も、
少し時間はかかると思うけれど、
必ず復帰する、と言っているそうです。

 

いろいろ調べた結果、給料は、払わなくてもいいらしい、
でも、社会保険料は払う必要があるようだし、
他の従業員に与える影響もあるし・・・

とはいえ・・・今更仕方がない・・・

 

それにしても・・・
なぜ休職期間を3年にしたのか?
聞くと、K氏は、「B株式会社」の就業規則をもとにして、
「株式会社MM」の就業規則を作成していたのです。

 

M社長は、起業するときにものの本で、
世間にあるひな形の就業規則では危ない、ということは、
読んだ記憶がありました。
しかし、K氏は、就業規則を作成したこともある総務経験者です。
大丈夫だと思ったのに、かえってそれが逆効果となってしまいました。

 

幸い、K氏は、約6か月の療養後、仕事に復帰することができました。

M社長は、K氏に、就業規則について率直な希望を述べ、
就業規則の改訂に着手しました。

 

従業員にとって不利益な変更も含まれますが、
今度こそ、M社長自身が従業員に趣旨を語り掛け、
従業員の賛同を得て、
小さいけれど希望がいっぱいの「株式会社MM」にふさわしい、
新しい就業規則が完成しました。

休職期間は、
勤続年数もからめて1~6か月になりました。
(細かい規定は割愛いたします。)

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。

No.17 休職について考える [2012.05.27]

こんにちは。下中です。
本日の「ひばり人事労務コラム」です。

 

今日は、「休職」について考えてみます。

 

休職とは、
「私傷病や留学、公務など労働者の個人的事情の発生に対して、
在籍扱いのまま労働義務を免除する制度」です。

休職は、法律上必ず与えなければならないものではなく、
会社の任意とされています。
つまり「休職制度なし」としても一向に構わないというわけです。

とはいえ、実際に社員が長期病欠や留学をすることになると、
いきなり「労務の提供ができなくなったから解雇」との対応もしにくい。

そこで「休職」という制度を設けているわけです。

 

「休職」について大事なことは以下の3点です。

1.期間について定めること
2.休職期間中の賃金支払いについて定めること
3.休職期間満了時の取り扱いについて定めること

 

ひとつずつ見てみましょう。

 

1.期間について定めること

中小企業の場合、期間は通常1~3ヶ月程度でしょうか。
勤続年数によって休職期間に差を設けることもあります。

近年注意しなければならないことは、
休職期間の「通算」「延長」でしょう。

特に、メンタルヘルス不調による休職の場合、
類似傷病による休職を繰り返すケースが想定できるため、
その場合の通算方法や延長方法についても定義が必要です。

(メンタルヘルス不調による休職の場合、
類似傷病による休職期間は通算するほうが休職制度の趣旨に合致する、
という考え方が主流です。
メンタルヘルスに関することは、別の機会に譲ります。)

 

2.休職期間中の賃金支払いについて定めること

休職期間中は労働実態がないため、賃金支払いはなくてもかまいません。
大企業の場合、
休職後一定期間所得保障のため賃金支払いをすることもあります。
ただ、健康保険の傷病手当金をうまく活用して、
休職者の所得保全をする方法はあります。

 

3.休職期間満了時の取り扱いについて定めること

休職期間が終わった後どのように取り扱うか、
復帰させるとしたらその判断根拠はどこにあるのか、
などを定める必要があります。

中小企業では、病気による休職の場合、
休職期間満了時に傷病の状態が勤務復帰に足るほど回復していない場合、
退職扱いとすることが多いようです。

 

休職については、労働者としての地位に関わる部分であり、
とかくトラブルの種になります。
気をつけて管理をしましょう。

 

本日も、「ひばり人事労務コラム」
お読みいただきありがとうございました。